休眠している会社を復活させて事業を再開するのに必要な手続きは?
休眠している会社を復活させて、新たに事業を再開したい場合に必要な手続きについてまとめています。
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休眠会社とは
休眠会社とは、「長期間にわたって登記が変更されていない会社」のことです。
しばらく活動予定のない会社を休眠会社にすることにより、様々なメリットがあります。
会社を休眠状態にする手続き
税務署などの関係各所に休眠会社にする旨の届け出を提出することで、会社を休眠会社とすることができます。会社を休眠させるためには以下の6つの機関にそれぞれ書類を提出します。
提出先 | 提出書類 |
税務署 | 異動届出書(休業する旨を記載) 給与支払事務所の開設・移転・廃止届出書(廃止の欄の「休業」にチェック) |
都道府県税事務所 | 異動届出書(休業する旨を記載) |
市区町村役場 | 異動届出書(休業する旨を記載) |
労働基準監督署 | 労働保険確定保険料申告書 |
ハローワーク | 雇用保険適用事業所廃止届 資格喪失届 |
年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届 資格喪失届 |
提出書類が多く面倒ですが、費用はかからずに会社を休眠状態にすることができます。
自動的に休眠会社とみなされる条件
また、長期間登記を行わなかった場合も休眠会社であるとみなされます。
会社形態 | 休眠とみなされる条件 |
休眠会社 | 最後の登記から12年が経過している株式会社 |
休眠一般法人 | 最後の登記から5年が経過している一般社団法人・一般財団法人 |
会社法では、株式会社の役員の任期は最長10年と定められているため、どの株式会社も必ず10年に1回は登記(役員の変更登記)を行う必要があります。しかし、その10年の期限を2年以上経過しても新しい登記が行われていない会社は、法律上「休眠会社」と定められています。
休眠会社(株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から十二年を経過したものをいう。以下この条において同じ。)は、法務大臣が休眠会社に対し二箇月以内に法務省令で定めるところによりその本店の所在地を管轄する登記所に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合において、その届出をしないときは、その二箇月の期間の満了の時に、解散したものとみなす。ただし、当該期間内に当該休眠会社に関する登記がされたときは、この限りでない。
2 登記所は、前項の規定による公告があったときは、休眠会社に対し、その旨の通知を発しなければならない。
会社法第472条(休眠会社のみなし解散)
会社を休眠させるメリット
会社を休眠させることには次のようなメリットがあります。
- 廃業のように費用がかからない
- 休眠前に取得した許認可は維持できる
- 法人税・消費税の支払いがない
廃業のように費用がかからない
法人を解散するには費用がかかりますが、休眠には費用がかかりません。
廃業、解散する場合にかかる費用は以下の通りです。
項目 | 支払い内容 | 概算費用 |
解散・清算人選任登記 | 登録免許税 | 39,000円 |
官報公告 | 官報公告費用 | 33,000円 |
清算結了登記 | 登録免許税 | 2,000円 |
税務申告(税理士に依頼) | 報酬 | 約150,000円 |
休眠前に取得した許認可は維持できる
廃業ではなく休眠を選択した場合、税務署等への申告をすれば簡単に事業を再開することができます。
この時、休眠前に取得していた許認可等はそのまま維持されたまま復活できるので、事業の再開をスムーズに行うことができます。
法人税・消費税の支払いがない
休眠会社は事業活動を行っていないため、当然ですが法人税や消費税の課税はされません。
また、自治体によっては法人住民税の均等割りも免除されることがあります。
ただし、売上が0であっても確定申告はしなければならないことになっている点に注意が必要です。
会社を休眠させるデメリット
一方、会社を休眠させることで次のようなデメリットがあります。
- 税務申告は行う必要がある
- 役員の登記変更は行う必要がある
- 固定資産税は支払う必要がある
税務申告は行う必要がある
休眠中であっても、毎年税務申告の義務は発生します。
税務申告を2期連続で怠ると、青色申告が解除されてしまいますので、その場合はその後事業を復活させる際に再度青色申告の届出をする必要があります。
また、税務申告を税理士等に依頼する場合にはその分の報酬の支払いも必要になります。
役員の変更登記は行う必要がある
株式会社の場合、役員の任期は最長で10年ですので、休眠中であっても10年に一度は役員変更の登記をしなければなりません。登記の期限は、役員の交代から2週間以内であり、期限内に登記をしなかった場合には100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
固定資産税は支払う必要がある
法人で不動産を所有している場合、休眠中であっても固定資産税が発生します。
事業活動をしておらず収入はなくても、不動産を持っている限り支出は発生するという点に注意が必要です。
【簡単!】休眠会社の復活に必要な手続き
休眠会社を復活して事業を再開することは、実はとても簡単な手続きのみでOKです。
提出先 | 提出書類 |
税務署 | 異動届出書(会社を再開する旨を記載) |
都道府県税事務所 | |
市区町村役場 |
税務署、都道府県事務所、市区町村役場へ会社を再開する旨を記載した移動届出書を提出するだけで会社を復活させることができます。
会社の休眠中、売上がない状態でも確定申告などの税務申告が必要ですが、2期連続で期日内の確定申告を行わなかった場合には青色申告の承認が取り消されていますので、再開時には再度税務署へ青色申告承認申請書を提出することを忘れないようにしておきましょう。
仮に青色申告の承認が取り消されてしまった場合、取り消しがあった日から1年間は青色申告の申請ができなくなってしまいますので注意が必要です。
登記していた内容を変更して事業を再開したい
休眠している会社の登記内容を変更して事業を再開させることはもちろん可能です。事業再開で心機一転社名を変更する場合や、休眠中に思いついた新規事業を行う際に助かりますが、以下の注意点があります。
- 原始定款には変更を加えない
- 株主総会議事録の保存と提出が必要
- 変更内容によっては必ず変更登記が必要な内容がある
定款の内容を変更する際には、株主総会を開き、定款変更に関する特別決議をとる必要があります。この特別決議の内容は議事録を作成し、法務局へ登記内容の変更の申請をしなければなりません。
法務局に受理された新しい定款と原始定款の2つを保存することが必要になります。また、定款の変更についての特別決議の内容を示した議事録も同様に保管が必要です。
社名を変更して復活させる
会社が休眠中であっても、社名や本店所在地の変更登記は可能です。
休眠中の会社でも役員の変更登記が必要なように、休眠中でも登記の内容を変更することができ、変更した内容にて会社を再開させることができます。
社名を変更する場合には、取引先や口座情報の変更が必要になります。ただし、届出をしている企業の実印は、実は前の社名が彫られた印鑑のまま使っていても問題はありません。(見栄えは悪いですが、、)
事業内容を変更して復活させる
会社が休眠中であっても、事業内容の変更は可能です。
休眠中に思いついた新規事業を展開する場合、会社の目的について変更登記をして会社を休眠から復活させることができます。
不動産業を行う場合の定款の事業内容の書き方例
不動産事業を行う場合の事業目的の記載例は以下の通りです。自身の事業に適する目的を記載します。
不動産業を営むのであれば、「宅建業を営むこと」がわかる文言や、事業目的の末に「上記に関連する一切の事業」などの文言は必須でいれておくべきでしょう。
事業の区分 | 事業目的の記載例 |
不動産取引業 | 宅地建物取引業 |
不動産の売買、賃貸及びその仲介 | |
不動産の仲介・売買・賃貸・管理・宅地建物取引業 | |
不動産の売買、賃貸借管理及びこれに関する仲介業 | |
不動産賃貸・管理業 | 不動産賃貸、管理、経営 |
アパート、マンション、駐車場の経営 | |
不動産の賃貸・管理及びこれらの仲介 | |
駐車場の経営及び管理業務 |
定款に記載されている事業を必ず行わなければならないということもなければ、実際には行わない事業を記載してはならないということもありませんので、不動産仲介のみを目的とした会社を設立する場合でも、賃貸や管理などの記載をしておくのが一般的です。
特に不動産業の場合、専門的に取り扱う事業は決まっていたとしても、関連して事業が派生することは充分考えられますので、念のため将来関わりそうな事業は目的に記載しておくとよいでしょう。
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