【不動産鑑定士】不動産の鑑定と査定の違いは?不動産価格の決め方を徹底解説!

所有する不動産を売却するときには、不動産の価値の査定を不動産会社にお依頼することが一般的です。

しかし「不動産鑑定士」という職業があるように、不動産の「査定」と「鑑定」にはどのような違いがあるのか、また不動産の価格はどのように決まるのかを解説しています。

目次

不動産の「鑑定」と「査定」の違い

言葉の違い仕事の内容必要な資格
鑑定国土交通省が発表する公示価格や、都道府県が発表する基準地価の調査不動産鑑定士
査定個人間の不動産の売買などにおいて、いくらで売却できそうかの算出

不動産の「鑑定」とは

不動産の「鑑定」が必要なケースは、税務署への説明資料の作成や、裁判の証拠資料の作成、M&Aを行う際の企業が保有する不動産価値の算出などのケースが多いです。

国が定めた不動産鑑定評価基準に基づいて公的な不動産価格が算出されるため、上記のように証拠能力の高い資料の根拠として不動産鑑定士による鑑定評価が必要となります。

経済的な価値を重視し、客観的な金額が算出されます。

不動産の「査定」とは

一方で、不動産の「査定」は不動産を売却するといったケースで行われるものであり、「この物件はいくらで売れそうか?」という金額を算出します。

不動産会社に依頼することで、3カ月くらいで買い手が見つかりそうな見込みの金額が算出されるため、鑑定による価格と、査定による価格では差が出ることがあります。

鑑定か査定、どちらを依頼すべき?

比較項目鑑定査定
依頼先不動産鑑定事務所不動産屋
算出の基準・不動産鑑定評価基準に基づいて不動産鑑定士のみが算出可能
・経済的な価値を重視した客観的な価格
・明確な査定のルールは無く、誰でも算出可能
・3カ月以内に買い手がみつかりそうな価格
依頼料20-30万円0円
結果が出るまでの期間数週間~簡易査定:翌日~
訪問査定:1週間~
主な目的・不動産の価値の把握
(不動産の適正価格の調査、財産分与、相続、遺産分割など)
・不動産の売却

不動産鑑定は、専門の資格を持った不動産鑑定士のみが行うことができる独占業務であり、国土交通省が定める不動産鑑定評価基準に基づいて算出されるため、税務署や裁判所への説明資料を作成する場合や、M&A等で不動産を購入する際の適正な価格を調査したい場合等に依頼します。より公的で証拠能力の高い価格が算出されることになりますが、その分、費用と期間には余裕を持っていたほうが良いでしょう。

一方で、不動産査定は、資格に関係なく不動産屋が行うもので、不動産屋が物件を預かった場合におよそ3カ月程度で買い手が見つかりそうな価格が算出されます。
各エリアのだいたいの相場から算出可能ですので、簡易的な査定では早ければ翌日にでも査定価格を知ることができます。また、一般的には査定にかかる費用は無料です。

【不動産鑑定】不動産の価格が決まる要因

不動産の価格は、様々な要因の相互作用によって決定します。不動産の規模や用途によって買い手が異なるため、どのような買い手が対象の不動産を購入するのかという市場参加者の観点から客観的に価格が決められる必要があります。

不動産鑑定評価基準では、不動産の価格が決まる要因を大きく「一般的要因」「地域要因」「個別的要因」の3つに分類しています。

要因説明
一般的要因一般経済社会における不動産のあり方及びその価格の水準に影響を与える要因
地域要因一般的要因の相関結合によって規模、構成の内容、機能等にわたる各地域の特性を形成し、その地域に属する不動産の価格の形成に全般的な影響を与える要因
個別的要因不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因
不動産鑑定評価基準 総論 第3章

一般的要因

不動産価格に影響を与える大局的な要因で、「自然的要因」「社会的要因」「経済的要因」「行政的要因」に細分化されます。

自然的要因

自然的要因は、その土地に建築可能な建物や、その土地の農産物や林産物を生育する力に係る要因です。

  1. 地質、地盤等の状態
  2. 土壌及び土層の状態
  3. 地勢の状態
  4. 地理的位置関係
  5. 気象の状態

社会的要因

  1. 人口の状態
  2. 家族構成及び世帯分離の状態
  3. 都市形成及び公共施設の整備の状態
  4. 教育及び社会福祉の状態
  5. 不動産の取引及び使用収益の慣行
  6. 建築様式等の状態
  7. 情報化の進展の状態
  8. 生活様式等の状態

「8.生活様式等の状態」は、例えば高層マンションが普及することによりマンション用地の需要が高まり、立地が良く地積の大きい土地の価格が上昇することなどが挙げられます。

経済的要因

  1. 貯蓄、消費、投資及び国際収支の状態
  2. 財政及び金融の状態
  3. 物価、賃金、雇用及び企業活動の状態
  4. 税負担の状態
  5. 企業会計制度の状態
  6. 技術革新及び産業構造の状態
  7. 交通体系の状態
  8. 国際化の状態

「8.国際化の状態」は、金融、資本市場等の国際化の進展を背景に、外国為替、証券等の国際取引へのニーズに応えるため、24時間利用が可能なオフィスビルや、24時間営業の小売店舗等の用地需要が増大していることに対応する項目です。

行政的要因

土地と公共の利益には密接な関係があるため、公共の福祉を実現するために行政が行う法的規制は不動産価格に影響を与えます。

  1. 土地利用に関する計画及び規制の状態
  2. 土地及び建築物の構造、防災等に関する規制の状態
  3. 宅地及び住宅に関する施策の状態
  4. 不動産に関する税制の状態
  5. 不動産の取引に関する規制の状態

地域要因

用途が同質である地域に属していることにより不動産価格に影響を与える要因で、「宅地地域」「農地地域」「林地地域」の3つに大別されており、さらに宅地地域は「住宅地域」「商業地域」「工業地域」に細分化されています。

宅地地域

住宅地域

居住の快適性、利便性に影響を与える要因です。

  1. 日照、温度、湿度、風向等の気象の状態
  2. 街路の幅員、構造等の状態
  3. 都心との距離及び交通施設の状態
  4. 商業施設の配置の状態
  5. 上下水道、ガス等の供給・処理施設の状態
  6. 情報通信基盤の整備の状態
  7. 公共施設、公益施設等の配置の状態
  8. 汚水処理場等の嫌悪施設等の有無
  9. 洪水、地すべり等の災害の発生の危険性
  10. 騒音、大気の汚染、土壌汚染等の公害の発生の頻度
  11. 各画地の面積、配置及び利用の状態
  12. 住宅、生垣、街路修景等の街並みの状態
  13. 眺望、景観等の自然的環境の良否
  14. 土地利用に関する計画及び規制の状態
商業地域

その収益性に影響を与える要因です。

  1. 商業施設又は業務施設の種類、規模、集積度等の状態
  2. 商業背後地及び顧客の質と量
  3. 顧客及び従業員の交通手段の状態
  4. 商品の搬入及び搬出の利便性
  5. 街路の回遊性、アーケード等状態
  6. 営業の種別及び競争の状態
  7. 当該地域の経営者の創意と資力
  8. 繁華性の程度及び盛衰の動向
  9. 駐車施設の整備の状態
  10. 行政上の助成及び規制の程度
工業地域

生産の効率性と費用の経済性に影響を与える要因です。

  1. 幹線道路、鉄道、港湾、空港等の輸送施設の整備の状況
  2. 労働力確保の難易
  3. 製品販売市場及び原材料仕入市場との位置関係
  4. 動力資源及び用排水に関する費用
  5. 関連産業との位置関係
  6. 水質の汚濁、大気の汚染等の公害の発生の危険性
  7. 行政上の助成及び規制の程度

農地地域

  1. 日照、温度、湿度、風雨等の気象の状態
  2. 起伏、高低等の地勢の状態
  3. 土壌及び土層の状態
  4. 水利及び水質の状態
  5. 洪水、地すべり等の災害の発生の危険性
  6. 道路等の整備の状態
  7. 集落との位置関係
  8. 集荷地又は産地市場との位置関係
  9. 消費地との距離及び輸送施設の状態
  10. 行政上の助成及び規制の程度

林地地域

  1. 日照、温度、湿度、風雨等の気象の状態
  2. 標高、地勢等の状態
  3. 土壌及び土層の状態
  4. 林道等の整備の状態
  5. 労働力確保の難易
  6. 行政上の助成及び規制の程度

個別的要因

土地の形状や地積、接道の幅員、駅からの距離、築年数など、その不動産特有の理由により不動産価格に影響を与える要因です。

土地に関する個別的要因

宅地 – 住宅地
  1. 地勢、地質、地盤等
  2. 日照、通風及び乾湿
  3. 間口、奥行、地積、形状等
  4. 高低、角地その他の接面街路との関係
  5. 接面街路の幅員、構造等の状態
  6. 接面街路の系統及び連続性
  7. 交通施設との距離
  8. 商業施設との接近の程度
  9. 公共施設、公益的施設等との接近の程度
  10. 隣接不動産等周囲の状態
  11. 上下水道、ガス等の供給・処理施設の有無及びその利用の難易
  12. 情報通信基盤の利用の難易
  13. 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
  14. 土壌汚染の有無及びその状態
  15. 公法上及び私法上の規制、制約等
宅地 – 商業地
  1. 地勢、地質、地盤等
  2. 間口、奥行、地積、形状等
  3. 高低、角地その他の接面街路との関係
  4. 接面街路の幅員、構造等の状態
  5. 接面街路の系統及び連続性
  6. 商業地域の中心への接近性
  7. 主要交通機関との接近性
  8. 顧客の流動の状態との適合性
  9. 隣接不動産等周囲の状態
  10. 上下水道、ガス等の供給・処理施設の有無及びその利用の難易
  11. 情報通信基盤の利用の難易
  12. 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
  13. 土壌汚染の有無及びその状態
  14. 公法上及び私法上の規制、制約等
宅地 – 工業地
  1. 地勢、地質、地盤等
  2. 間口、奥行、地積、形状等
  3. 高低、角地その他の接面街路との関係
  4. 接面街路の幅員、構造等の状態
  5. 接面街路の系統及び連続性
  6. 従業員の通勤等のための主要交通機関との接近性
  7. 幹線道路、鉄道、港湾、空港等の輸送施設との位置関係
  8. 電力等の動力資源の状態及び引込の難易
  9. 用排水等の供給・処理施設の整備の必要性
  10. 上下水道、ガス等の供給・処理施設の有無及びその利用の難易
  11. 情報通信基盤の利用の難易
  12. 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
  13. 土壌汚染の有無及びその状態
  14. 公法上及び私法上の規制、制約等
農地
  1. 日照、乾湿、雨量等の状態
  2. 土壌及び土層の状態
  3. 農道の状態
  4. 灌漑排水の状態
  5. 耕うんの難易
  6. 集落との接近の程度
  7. 集荷地との接近の程度
  8. 災害の危険性の程度
  9. 公法上及び私法上の規制、制約等
林地
  1. 日照、乾湿、雨量等の状態
  2. 標高、地勢等の状態
  3. 土壌及び土層の状態
  4. 木材の搬出、運搬等の難易
  5. 管理の難易
  6. 公法上及び私法上の規制、制約等
見込地及び移行地

一般的には、例えば農地から宅地へ転換しつつある宅地見込地の場合は、転換後の宅地の個別的要因を重視して鑑定を行うが、転換または移行の程度が低い場合においては、転換前または移行前の種別の地域内の個別要因をより重視します。

最近では、既存商業地へのマンション建設が進むことにより、逆に商業地から住宅地への移行地も発生していることに注意が必要です。

建物に関する個別的要因

  1. 建築(新築、増改築等又は移転)の年次
  2. 面積、高さ、構造、材質等
  3. 設計、設備等の機能性
  4. 施工の質と量
  5. 耐震性、耐火性等建築物の性能
  6. 維持管理の状態
  7. 有害な物質の使用の有無及びその状態
  8. 建物とその環境との適合の状態
  9. 公法上及び私法上の規制、制約等

建物及びその敷地に関する個別的要因

  1. 賃借人の状況及び賃貸借契約の内容
  2. 貸室の稼働状況
  3. 躯体・設備・内装等の資産区分及び修繕費用等の負担区分
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